2017-07-20 勝負してみるか
「なんだおまえ?ここの人間じゃねえな?」
カズがシゲルに聞いた。
「オレたちはこの時間から正式にここを借り切ってるんだ」
やばい空気を察して、キヨシがカズの腕をひっぱった。
「いこう、カズ」
「くそったれが……」
ここはキヨシに押し切られるカズだったが、そんなふたりをシゲルが止めた。
「待て…なにも立ち去れなんて言ってない。さっき、走りを見させてもらったが、おまえ、少しは走れそうだな」
「あたりめえじゃねえか。オレは世田谷最速の男――」
勘違いして答えるカズ。
「口だけ番長のほうじゃない。おまえだ」
キヨシに声をかけるシゲル。ガクッと落ち込むカズ。シゲルがふたたび言った。
「オレはシゲルだ……勝負してみるか?」
「応じるつもりはない」
「なに?」
そのとき、女の叫び声がした。シゲルの仲間のひとりがやや離れた場所から綾をつかまえてきた。
「この子、おまえらの知り合いか?」
「綾!」
綾はびっくりしてふたりに聞いた。
「こ、これ、どうなってるの?」
そのとき、怒りで顔を曇らせるシゲルが言った。
「連れてこい!」
そして、綾を連れてくる男を殴りつけた。
「!」
シゲルはキヨシに言った。
「こんなことをするのはオレの主義じゃない…すまなかった…」