2017-07-01 シゲルのTeam S
「最初はヤスオだ。もしなにかあったら、警笛鳴らせよ!」
「おう、まかせとけ!」
ヤスオが答えた。
「さあ、行こうぜ!」
カズが声をかけてバイクに乗り、板を乗りあげてコースに入っていった。ところが、コースに侵入した彼らが気づかない死角に5人の先客が来ていた。
シゲルのほか、おそろいの黒いレーシングつなぎを着たメンバーがいる。『Team S』のステッカーを貼った、黒のNSR50が5台。
ひとりの後輩がシゲルに言った。
「シゲルさん、ネズミが入ってきましたよ。追い出しますか?」
「……ちょっと待て。様子を見よう」
シゲルが止めた。カズたちはバイクを停めて、コース全体を見ている。
「どうだ、ここがオレたちのホームコースだ」
「だいぶせまいけど、練習にはなるな」
キヨシが満足気に見ている。それを見るカズは悪だくみの顔になった。
こっそり綾を呼んでおいたんだ……おまえは今夜、綾の前でオレにレースで負けて恥をかくんだ、フフフ……それにしても、綾のヤツ、おそいな。
その頃、綾は自宅の自分の部屋で勉強していた。綾がふと顔をあげる。
「あっ!忘れてた!」
彼女はそとに出て、あわてて自転車に飛び乗った。
「キヨシちゃん、どんなふうに走るんだろう……きっと、カッコいいだろうな~」
綾は自転車で猛ダッシュした。