2017-06-27 ホームコース
「すまないけど、群れて走るのは気が進まないな」
ポツリと言うキヨシに、カズは内心カーッとなった。くそー、こいつバカにしやがって。綾の知り合いじゃなけりゃボコボコにしてるとこなのに。そうかい、それならエサで釣ってやるとするか。
カズはキヨシを誘った。
「じゃ、そのおまえの走り、見せてくれねえか? 今夜、城南教習所で走るんだよ。いっしょに来ねえか?」
「教習所?」
「忍び込んで走らせてもらうのさ。ちょっとしたテクニカルスポットだぜ」
キヨシが初めて興味をもつ顔になった。
その夜、キヨシがNSR50で待っているとカズが暴走族風改造マシンでやってきた。鬼ハンドル、ツッパリテール。ケンカ仲間のバイクを数台、従えている。
「よう、待たせたな」
話しかけたカズにキヨシが苦笑した。
「たしかに多少、方向性がちがうな……」
教習所の敷地と道路の境に、幅1メートルほどの川があった。コース内に設置された大時計は8時35分をさしていた。
カズ、キヨシ、ほかの仲間たちは近くの雑木林から、畳1畳ほどの厚い板を運んできて、川の上に板を渡した。
「だいじょうぶなのか、こんなことして?」
「順番で見張りにつくから、問題ねーよ!」
いまは考えられないが、ひと昔前はこんな時代もあったのだ。