2017-06-20 小説「コンロッド」
ココログのほうでやっていた小説「環8ロード」の続編をこちらではじめます。
空にかかる雲。カズの心にもかかる雲。
「キヨシちゃん?!……」
「フフ、呼びやすいからそう呼んでるの。興味あるの?」
「い、いや、ちょっとな……」
「キヨシちゃんはね、去年、同じクラスだったの。高校を卒業したら、整備士やりながらレーサーを目指すんだって」
「へえ……」
カズは内心で対抗意識を燃やす。オレだってバイクじゃ、そこそこの腕なんだ。へっ、キヨシめ、しょせんはお遊びレベルだろ。
すっかり悪人顔で思案をめぐらすカズ。しかし、そんなことも知らず、綾は語り続ける。
「でね、ちょうど私のお兄ちゃんがライディングスクールのインストラクターやってるって教えたら、一度、見に行ったのがきっかけで、今は助手のバイトしてるのよ」
動揺するカズ。ライディングスクール?ス、スクールだろうがなんだろうが、こっそり夜通し走りまわってきたこのオレさまにかなうわけがねえに決まってる。
「今のキヨシちゃんはバイク一筋で、女の子には目もくれないのよ……」
えっ、なんなんだ綾、そのさびしそうな顔は。もしかしておまえは……も、もしかして、……。
「でもすごいなあ、キヨシちゃん……夢があるなんてうらやましい……私は受験とか、就職とか、目先のことで頭がいっぱいなのに」